普段使っているパソコンでAIエージェントを用意したものの、「外出先のノートパソコンでも同じ仕事を続けたい」と思うことがあります。
今回使うのは、ファイルと変更履歴を保管できるGitHub(ギットハブ)です。専門的な仕組みを一から作るのではなく、GitHubを2台のパソコンで使う「共通の書類棚」として考えます。
AIエージェントは一つのアプリではない
AIエージェントというと、一つのアプリを別のパソコンへ移せば使えるように思えるかもしれません。しかし、仕事用に育てたAIエージェントは、いくつかの要素が集まってできています。
- AIに覚えさせた仕事の目的やルール
- 参照する資料やナレッジ
- 作業手順やワークフロー
- プログラムや設定ファイル
- 現在どこまで進んでいるかを示す記録
- 外部サービスへ接続するための認証情報
- AIエージェントを動かすためのソフト
別のパソコンで続きを行うには、これらを「共有してよいもの」と「各パソコンで設定するもの」に分ける必要があります。
GitHubが得意なのは、ルール、資料、プログラム、作業記録などのファイルと変更履歴を引き継ぐことです。パスワードやログイン状態まで自動的に移すものではありません。
GitとGitHubは何が違う?
Git(ギット)は、ファイルをいつ、どのように変更したかをパソコン内に記録する仕組みです。書類で例えると、修正した内容と日付を残す「変更履歴の台帳」にあたります。
GitHub(ギットハブ)は、そのGitの記録をインターネット上へ保管し、複数のパソコンや人で共有できるサービスです。今回の記事では「変更履歴も一緒に預けられる共通の書類棚」と考えると分かりやすいでしょう。
つまり、Gitで変更を記録し、その記録をGitHubへ送ることで、Mac miniとMacBookの間で作業を引き継ぎます。細かな操作用語は、後ほどcommit・push・pullの三つに分けて説明します。
GitHubを2台のパソコンの共通保管場所にする
今回の例では、Mac miniとMacBookの間にGitHubを置きます。
Mac miniで作業した内容をGitHubへ預け、MacBookで受け取る。MacBookで進めた内容をGitHubへ戻し、Mac miniで受け取る。
普通のクラウドストレージとの大きな違いは、ファイルの最新版だけでなく、変更の記録を残せることです。誤った変更があった場合も、どこで変わったのか確認しやすくなります。
会社の情報や未公開の資料を含む場合は、誰でも見られる公開設定ではなく、許可した人だけが見られる非公開リポジトリを使います。ただし、非公開にすれば何を保存してもよいわけではありません。パスワードやAPIキーなどはGitHubへ入れず、別に管理します。
最初に一度だけ行う準備
Mac miniとMacBookの両方でAIエージェントを使うには、最初に環境を整えます。
1.Mac miniのフォルダを整理する
AIエージェントの仕事に必要なファイルを、一つの専用フォルダへまとめます。デスクトップ全体や書類フォルダ全体を登録するのではなく、必要な範囲だけに絞ります。
フォルダには、次のようなものを入れます。
- AIエージェントの目的とルール
- 参照する資料
- 作業手順
- プログラム
- 必要なソフトと設定方法の説明
- 現在の進み具合が分かる作業メモ
Codexを使う場合、長く使う方針は会話だけでなく、AGENTS.mdやプロジェクト内の説明資料へ残しておくと、別の会話や別のパソコンでも読み直せます。
2.GitHubに非公開の保管場所を作る
整理したフォルダを、GitHubの非公開リポジトリへ登録します。「リポジトリ」は難しく聞こえますが、ここでは変更履歴を残せる専用保管場所と考えてください。
最初の登録では、秘密情報が含まれていないか確認します。特に次のものは、そのまま登録しません。
- APIキー
- パスワード
- 顧客の個人情報
- ログイン情報を含む設定ファイル
- 公開する必要のない認証用ファイル
3.MacBookへコピーを作る
MacBook側でGitHubへログインし、登録したリポジトリを取り込みます。この操作をclone(クローン)と呼びます。
cloneすると、GitHubに保管されているAIエージェントのフォルダと変更履歴が、MacBookにも用意されます。そのフォルダをCodexのローカルプロジェクトとして登録します。

GitHubのサービスにアクセスして用意したレポジトリ(フォルダ)からAIエージェントファイルをMacbookに複製できます。 単純にファイルをUSBなどでコピーするのではなく、ファイルの変更履歴を記録しておいたり、更新情報を最新のものに同期させておくことができます。
GitHubはプログラムを共同開発するなどに使われることが多かったですが、AIがでてきてからAIエージェントの活用にも使われることが増えてきました。

4.MacBook側の環境を整える
ファイルを取り込んだだけでは、すべてが動くとは限りません。MacBookにも必要なソフトを入れ、CodexやGitHubへログインし、APIキーなどを安全な場所へ設定します。
この記事のようにCodexアプリを使う場合は、MacBookにもCodexアプリがインストールされ、普段使うOpenAIアカウントでログインできていることが必要です。GitHubにもログインし、対象の非公開リポジトリを見る権限があることを確認します。
この初期設定を一度整えておけば、その後はGitHubを通して作業内容を受け渡せます。
パソコンを切り替えるときの流れ
Mac miniからMacBookへ切り替えるときは、次の順番で進めます。
| 場面 | 行うこと |
|---|---|
| Mac miniで作業を終える | 変更内容を確認し、GitHubへ保存する |
| 外出先でMacBookを開く | GitHubから最新版を取り込む |
| MacBookで作業する | Codexへ指示し、ファイルの作成・修正・確認を行う |
| MacBookで作業を終える | 変更内容を確認し、GitHubへ保存する |
| Mac miniへ戻る | GitHubから最新版を取り込んで再開する |
この受け渡しで使う基本用語は、commit、push、pullの三つです。
| 用語 | 簡単な意味 | 書類に例えると |
|---|---|---|
| commit | 変更内容をそのパソコン内で記録する | 何を直したか伝票へ書く |
| push | 記録した変更をGitHubへ送る | 共通の書類棚へ戻す |
| pull | GitHubの最新版を取り込む | 共通の書類棚から受け取る |
つまり、Mac miniで作業を終えたら「commitしてpush」、MacBookで始める前に「pull」します。MacBookからMac miniへ戻るときも同じです。
操作はCodexに手伝ってもらったり、GitHub Desktopなどの画面から行ったりできます。ただし、内容を確認しないまま毎回自動でpushする運用は避けた方が安全です。誤った修正や削除まで共有してしまう可能性があるため、最後に人が変更内容を確認します。
2台のMacで作業するときは、AIに状況確認から頼む
2台で作業すること自体は問題ありません。大切なのは、自分でGitの操作方法をすべて覚えることではなく、いま何を確認し、どこまで実行してよいかをAIへ具体的に伝えることです。
安全に進めるため、AIへの依頼は次の3段階に分けます。
- まず現在の状態だけを確認してもらう
- 何を行う必要があるか説明してもらう
- 内容を人が確認してから実行してもらう
最初から「全部最新にして」とだけ伝えると、意図しない変更まで共有される可能性があります。「確認するだけ」「まだ変更しない」「実行前に説明する」と明記するのがポイントです。
普段どおりMacを切り替える場合
MacBookで作業を始める前は、AIへ次のように頼みます。
このプロジェクトの状態を確認してください。このMacにまだ共有していない変更がないか確認したうえで、GitHubにある最新版を安全に取り込めるか説明してください。問題がなければ最新版を取り込んでください。競合や不明点があれば、変更せずに止まって報告してください。
作業を終えたときは、すぐにGitHubへ送らせるのではなく、まず変更内容を確認します。
今回変更したファイルと内容を一覧にし、秘密情報、不要なファイル、意図しない削除が含まれていないか確認してください。GitHubへ共有する内容を分かりやすく説明し、私が確認するまでは送信しないでください。
説明を確認して問題がなければ、続けて次のように伝えます。
確認した変更を作業記録として保存し、GitHubへ共有してください。完了後、何を共有したかと、エラーがなかったかを報告してください。
この流れなら、専門用語をすべて覚えていなくても、AIの説明を見ながら安全に端末を切り替えられます。
最新版を受け取る前に、両方のMacで作業した場合
Mac miniの作業をGitHubへ共有した後、それを受け取らずにMacBookでも作業してしまうことがあります。この場合は、どちらかを上書きするよう指示せず、まず両方の変更を調べてもらいます。
Mac miniからGitHubへ共有した変更と、このMacBookに残っている変更があるようです。どちらも失わないように、現在の状態と変更の違いを確認してください。まだ統合や上書きは行わず、安全に一つへまとめる手順を説明してください。
変更した場所が重なっていなければ、AIが安全にまとめられることがあります。説明を確認してから、次のように依頼します。
説明してくれた方法で、GitHub側とこのMac側の変更を両方残してまとめてください。途中で内容の選択が必要になった場合は、自分で決めずに止まって質問してください。完了後、統合した内容を報告してください。
「新しい方を残して」「全部上書きして」といった曖昧な指示は避けます。更新日時が新しくても、必要な内容がすべて含まれているとは限らないためです。
同じファイルの同じ場所を編集していた場合
2台で同じ箇所を書き換えていると、AIやGitだけではどちらを残すべきか判断できない場合があります。これを競合(コンフリクト)と呼びます。
競合が起きたら、AIへ勝手に片方を選ばせず、違いを人が理解できる形で説明してもらいます。
競合しているファイルを一覧にしてください。それぞれについて、Mac mini側の内容、MacBook側の内容、両方を組み合わせる場合の案を、専門用語を減らして説明してください。まだファイルは修正せず、私の判断を待ってください。
説明を読んで残す内容を決めたら、ファイルごとに具体的に指示します。
このファイルはMac mini側の文章を基準にして、MacBook側で追加した○○の内容も残してください。修正後の文章を見せ、私が確認してから競合の解消とGitHubへの共有を完了してください。
GitHubのブラウザ認証もAIに案内してもらえる
GitHubへのログイン許可は、Mac miniとMacBookで別々に設定します。一方のMacでブラウザ認証をしても、もう一方へ自動では引き継がれません。
初めて使うMacでは、AIへ次のように依頼できます。
このMacで、このプロジェクトのGitHubリポジトリを利用できるようにしてください。必要なツールが入っているか確認し、入っていなければインストール方法を案内してください。GitHubの認証はブラウザで行いたいです。認証画面が出たら、私が行う操作を一つずつ説明してください。
ブラウザで許可すると、認証情報はそのMacへ保存されます。通常は、作業を受け取ったり共有したりするたびにログインし直す必要はありません。GitHub側で許可を取り消した場合や認証が失効した場合は、同じように再認証します。
状況が分からないときに使える指示
どちらのMacが最新版か分からなくなった場合は、無理に作業を進めず、次の指示から始めます。
現在のプロジェクトとGitHubの状態を確認してください。このMacだけにある変更、GitHubだけにある変更、両方で変更されているファイルを分けて説明してください。変更を失わない進め方を提案し、私が確認するまではファイルの修正やGitHubへの共有を行わないでください。
AIに操作を任せる場合も、最初は確認だけ、次に説明、最後に実行という順番を守ることで、2台のMacを切り替えるときの事故を減らせます。
GitHubで共有できるもの・できないもの
GitHubを使う前に、引き継げるものと、別に準備するものを確認します。
| GitHubで共有しやすいもの | 各パソコンで設定するもの |
|---|---|
| AIエージェントの目的とルール | CodexやGitHubへのログイン |
| 参照するナレッジや資料 | APIキーやパスワード |
| プログラムや作業ファイル | 必要なソフトのインストール |
| 変更履歴 | ファイルやアプリの操作権限 |
| セットアップ手順 | ブラウザや外部サービスのログイン状態 |
| 進行状況を記録した作業メモ | GitHubへ保存していないローカルファイル |
APIキーなどをGitHubへ入れないために、登録対象から外すファイルを指定する.gitignoreという仕組みがあります。また、設定に必要な項目だけを書いた見本を用意しておくと、MacBook側で何を設定すればよいか分かりやすくなります。
APIやパスワードをどのように共有するか?
プロジェクトが.env.localを使う設計の場合は、次のように準備します。
- Mac miniのプロジェクトフォルダ内に
.env.localを作り、APIキーなどを記入する .gitignoreへ.env.localを追加し、GitHubへ送られないようにする- 必要な項目名だけを書いた
.env.exampleを作り、こちらはGitHubで共有する - MacBookでpullした後、
.env.exampleを見ながらMacBook用の.env.localを作る - APIキーの値は、パスワード管理アプリなど安全な方法でMacBookへ設定する
たとえば、共有する見本には値を書かず、次のように項目名だけを残します。
SERVICE_API_KEY=
OTHER_SERVICE_API_KEY=実際のキーは、各パソコンの.env.localにだけ入力します。メールやチャットにそのまま貼り付けることも避けましょう。
「ファイルの続き」と「会話の続き」は分けて考える
GitHubで引き継げる中心は、AIエージェントのファイルと変更履歴です。Mac miniで行ったCodexとの会話が、GitHubによってMacBookへ移るわけではありません。
そのため、大切な判断や現在の進み具合を、会話だけに残さないことが重要です。
- AIエージェントの基本方針はルールファイルへ残す
- 決まったことは決定記録へ残す
- 作業途中の内容は進行メモへ残す
- 次に行うことを具体的に書く
- 必要な確認事項を一覧にする
こうしておけば、MacBookで新しい会話を始めても、Codexがプロジェクト内の記録を読み、続きから取り組みやすくなります。
作業を再開するときの指示例
MacBookでプロジェクトを開いたら、Codexへ次のように指示すると、前回までの内容を確認してから作業を始めやすくなります。
このプロジェクトのAGENTS.md、README.md、前回の作業メモを読んでください。完了していること、まだ終わっていないこと、次に行う作業を整理して説明してください。私が内容を確認するまではファイルを変更せず、不明点があれば先に質問してください。
プロジェクトによってファイル名は異なります。大切なのは、どの資料を読むか、何を整理するか、すぐに変更してよいかを具体的に伝えることです。
2台で安全に使うための五つのルール
仕組みを複雑にしなくても、次のルールを守るだけで混乱を減らせます。
- 作業を始める前にpullする
- 作業を終える前に変更内容を確認する
- 確認後にcommitしてpushする
- 同じファイルを2台で同時に編集しない
- APIキーやパスワードをGitHubへ入れない
特に大切なのは、Mac miniとMacBookのどちらが最新版か分からない状態を作らないことです。「始める前に受け取る、終わったら戻す」を一つの習慣にします。
Codex Cloudを使う方法は「その2」で紹介
GitHubを使う今回の方法では、Mac miniとMacBookの両方に作業フォルダを用意します。そのため、パソコンを切り替えるたびにpushとpullが必要です。
Codex Cloudは、2台のパソコンを自動同期する仕組みではありません。AIエージェントの仕事場をクラウド上に用意し、GitHubにある内容を取り込んで作業する方法です。
次回の「その2」では、Codex Cloudを使うと何が楽になるのか、Mac miniやMacBookのローカル作業と何が違うのかを詳しく紹介します。
まとめ
普段のパソコンで用意したAIエージェントを、外出先のノートパソコンでも使うなら、非公開GitHubを共通の保管場所にする方法が現実的です。
Mac miniとMacBookの例では、次の流れになります。
- Mac miniで変更を確認してGitHubへpushする
- MacBookで最新版をpullする
- 外出先でAIエージェントを使う
- MacBookの変更をGitHubへpushする
- Mac miniへ戻ったら最新版をpullする
GitHubで共有するのは、AIエージェントのルール、ナレッジ、プログラム、作業記録です。APIキー、パスワード、ログイン状態、端末固有の設定は、安全のため各パソコンで準備します。
YMWorksでは、AIツールを入れるだけでなく、事業のルールや資料を整理し、誰がどこで使っても仕事を引き継ぎやすい形へ整えるところから支援を検討しています。AIエージェントを別のパソコンや担当者でも使えるようにしたい場合は、まず現在のファイル、権限、作業手順を確認することが第一歩です。

