AIエージェントは、指示を受けてパソコン内のファイルを読み、画面やプログラムを作り、エラーを調べるところまで手伝えるようになりました。以前の「方法を教えてもらい、自分で作業する」流れから、「目的を伝え、出来上がったものを確認する」流れへ変わりつつあります。

ただし、Webシステム全体を一度の指示で作り、確認せずに使い始めるのは危険です。AIを活用する開発ほど、計画する・小さく作る・実際に確かめるという基本が重要になります。

Webシステムは一度に完成させない

Webシステム開発は、新しい店舗を作ることに似ています。

図面を決めずに、受付、倉庫、会計、看板を同時に工事すると、通路がつながらなかったり、必要な場所に設備がなかったりします。まず一つの受付業務を動かし、利用者が迷わず使えるかを確認してから、次の場所へ広げます。

前のChapterで決めた「利用者・仕事の流れ・画面・機能・データ・権限」が、開発の図面になります。この図面をAIへ渡し、最初の試作範囲を一つに絞ります。

一つの仕事を最初から最後まで通す

予約管理なら、最初からすべての機能を作る必要はありません。

  1. 架空の予約申込みを入力する
  2. 受付担当者が一覧で確認する
  3. 詳細を開く
  4. 予約の状態を「確認済み」へ変更する
  5. 変更後の状態が保存・表示される

このように、一つの仕事を最初から最後まで通せる小さな仕組みを作ります。画面だけを並べた見本でも、データベースだけを作った状態でもなく、利用者が一つの成果へ到達できることが大切です。

開発で使う四つの場所を知る

AIとWebシステムを作るときは、主に四つの場所を使います。

場所簡単な説明確認すること
プロジェクトフォルダシステムの設計図や部品をまとめた保管場所関係のないファイルを触っていないか
IDEファイル、コード、AI、変更内容をまとめて見る作業台どのファイルが変わったか
ターミナル開発用サーバーやテストを動かす操作窓口実行する命令と結果
ブラウザ利用者と同じように画面を試す場所表示、入力、エラー、操作の流れ

専門的な命令をすべて暗記する必要はありません。AIへ実行を任せる場合でも、「今は何を動かしているのか」「結果をどこで確認するのか」は理解しておきましょう。

ローカル環境は公開前の試運転場所

開発中によく見るlocalhostは、自分のパソコン自身を表す名前です。開発用サーバーを起動すると、ブラウザから試作中の画面を確認できます。

これは店舗でいえば、開店前に店内だけで行う試運転です。インターネットへ一般公開された状態ではありません。

ローカルで動いたからといって、そのまま安全に公開できるわけではありません。公開環境、秘密情報、監視、バックアップなどは、別の公開準備が必要です。

画面を部品に分けると育てやすくなる

Webシステムの画面は、ボタン、入力欄、見出し、予約カード、一覧表、確認メッセージなどの小さな部品に分けられます。この再利用できる画面部品をコンポーネントと呼びます。

コンポーネントは、店舗で共通して使う棚や案内札のようなものです。同じ役割のボタンを画面ごとに別々に作るのではなく、一つの共通部品として管理します。

  • 表示や操作をそろえやすい
  • 一か所の修正を複数画面へ反映しやすい
  • AIへ変更範囲を伝えやすい
  • 後から画面や機能を増やしやすい

小規模なシステムでも部品を整理しておくと、事業の成長に合わせて機能を追加しやすくなります。ただし、最初から細かく分けすぎる必要はありません。同じ形や動作が繰り返し現れたところから共通化します。

AIには「計画・実装・確認」を分けて任せる

AIへ「予約システムを作って」とだけ伝えると、必要以上の機能を作ったり、会社の運用と異なる判断をしたりする可能性があります。

仕事を三つに分けます。

1.計画する

最初に、要件を読んで変更計画を出してもらいます。

  • 今回作る利用の流れ
  • 新しく作る画面と部品
  • 変更するファイル
  • 使用する仮データ
  • 今回は作らない機能
  • 完成を判断する条件
  • 分からない点と確認が必要な点

この段階では、すぐにファイルを変更させず、方向が合っているかを人が確認します。

2.小さく実装する

計画を承認したら、一つの流れだけを実装します。

最初は架空データを使い、画面表示、入力、状態変更などの中心機能を作ります。本物の顧客情報、決済、外部への自動送信などは接続しません。

大きな依頼を一度に渡すより、「予約一覧を表示する」「詳細を開く」「状態を変更する」のように、確認できる単位で進めます。

3.人が確認する

完成の判断は、AIの「できました」という報告ではなく、実際の結果で行います。

  • ブラウザで画面が表示されるか
  • スマートフォン幅でも操作できるか
  • 必須情報がない場合に止まるか
  • 入力内容が正しく保存・表示されるか
  • 権限のない利用者が操作できないか
  • 関係のない画面が壊れていないか
  • 変更したファイルと理由を説明できるか

見た目だけでなく、正常な場合と失敗する場合の両方を試します。

入力フォームは「間違いを直せること」まで設計する

入力フォームは、項目を並べるだけでは完成ではありません。

たとえば、予約希望日が空欄、メールアドレスの形式が違う、利用できない日付が選ばれた場合に、どこを直せばよいか分かる表示が必要です。

ブラウザ側の確認は、利用者がその場で間違いを直すために役立ちます。しかし、ブラウザ側の確認は回避される可能性があるため、サーバー側でも入力を確認します。

初回の試作では、次の四つを確かめます。

  • 正しい入力を受け付ける
  • 必須項目がない場合は保存しない
  • 間違った場所と直し方を表示する
  • 不正な入力をサーバー側でも拒否する

データベースやAPIは、必要になった順に接続する

画面ができた直後に、本物の顧客データや外部サービスへ接続する必要はありません。

まず架空データで利用の流れを確認し、次にどの情報を保存するかを確定します。その後で、データベースやAPIとの接続を一つずつ追加します。

APIは、外部サービスや別の機能と情報を受け渡す窓口です。予約カレンダー、メール通知、決済、AIなどと連携できますが、接続先が増えるほど、失敗時の対応や権限管理も増えます。

初回試作では、次の原則を守ります。

  • 実在する顧客・従業員の情報を使わない
  • APIキーやパスワードを本文や指示文へ書かない
  • 読み取りだけで試せるなら、書き込み権限を与えない
  • 接続に失敗しても、画面全体が操作不能にならないようにする
  • 外部送信や決済は、人が確認する段階を残す

エラーはAIへ「状況ごと」伝える

開発中にエラーが出るのは珍しいことではありません。大切なのは、「動かない」とだけ伝えないことです。

AIへ次の情報をまとめて渡します。

  1. 何をしようとしたか
  2. どの画面・操作で起きたか
  3. 本来どうなるはずだったか
  4. 実際に何が起きたか
  5. 表示されたエラー文
  6. 直前に変更した内容
  7. 再現できる手順

画面の画像やエラー記録を渡す場合は、顧客情報、メールアドレス、APIキーなどが映っていないか確認します。

修正後は、そのエラーが消えたことだけでなく、以前動いていた機能が壊れていないかも試します。

Claude CodeとCodexは、共通の完成条件で使う

Claude CodeとCodexは、どちらもプロジェクトのファイルを調べ、変更し、開発用の命令やテストを実行する支援に利用できます。

ただし、画面、権限の選択肢、確認の仕組み、実行環境は同じではありません。操作名を無理にそろえるのではなく、共通する仕事の流れを決めます。

  1. 要件と対象フォルダを渡す
  2. 変更前に計画を確認する
  3. 一つの機能だけを実装する
  4. 変更内容を確認する
  5. 開発用サーバーで動かす
  6. 正常・不足・誤入力・権限外を試す
  7. 結果と残る課題を記録する

どちらを使っても、最終的に見るのは「人の仕事が正しく完了するか」です。

ローカルで動くことは、公開準備の始まり

Chapter 2の完成は、ローカル環境で小さなWebシステムが動き、試した結果と残る課題を説明できることです。

インターネットへ公開する前には、さらに次の準備があります。

  • 変更履歴と戻し方
  • 公開先とドメイン
  • APIキーなど秘密情報の管理
  • 個人情報と権限の保護
  • 公開前テスト
  • エラーの記録と通知
  • バックアップと復旧
  • 継続的な更新と費用管理

これらは、次のChapterで扱う公開・セキュリティ・保守運用の仕事です。

YMWorksのWebシステム開発でできる支援

AIを使えばコード作成は速くなりますが、事業に合う要件、画面の使いやすさ、データの扱い、安全な公開、継続的な改善まで自動で決まるわけではありません。

YMWorksでは、事業者の言葉をそのまま機能一覧へ変えるのではなく、現在の仕事を整理し、必要な仕組みへ落とし込み、小さな試作から確認する進め方を重視します。

  • 現在の業務と課題の整理
  • ホームページ、既存サービス、独自システムの比較
  • 要件定義と画面・データ設計
  • AIを活用した試作と実装
  • 利用者目線での確認と改善
  • 公開後の運用を考えた構成

「何を作ればよいか、まだ言葉にできていない」という段階でも、業務の整理から始められます。

まとめ

AIとWebシステムを作るときも、開発の基本は変わりません。

  • 要件を図面として、最初の仕事を一つに絞る
  • ローカル環境で公開前の試運転を行う
  • 画面を再利用できる部品として整理する
  • 計画・実装・確認を分ける
  • フォームは間違いを直せるところまで設計する
  • 架空データから始め、外部接続は一つずつ増やす
  • AIの完了報告ではなく、実際の動作で判断する

AIは開発を速くする優秀な作業者です。一方、何を作るか、どこまで任せるか、何をもって完成とするかを決めるのは人です。この役割分担が、速さと安心を両立させます。

参考にした公式情報