前回は、打ち手を決める前に通る5つの順番をお伝えしました。今回はその手前、自社の現在地を紙に書き出すところから始めます。

「うちが何で儲けているかなんて、分かっているよ」

そう思われるかもしれません。ただ、それを紙に書いて人に見せられる形にしている会社は、あまり多くありません。

一度、自問してみてください。「なぜお客様は、他ではなくうちを選んでくださっているのか」

なぜ、わざわざ紙に書き出すのか

頭の中にあるうちは、抜けに気づけないからです。

考えていることは、いつも同じ道を通ります。よく通る道は太くなり、通らない道は細くなります。紙に書き出すと、その細い道が空白として目に見えます。

もうひとつ、人に見せられる形になるという効果があります。頭の中にあるものは、従業員にもご家族にも相談できません。1枚の紙になっていれば、「ここが空いているけど、どう思う」と聞けます。

事業計画書を作るわけではありません。清書も不要です。手書きで構いません。

埋めるのは5つの箱

自社の商売を書き出す5つの箱。①誰に、②何を、③どう届けるか、④どんな関係か、⑤何で稼ぐか。お客様に近い方から順に埋めていきます。
自社の商売を書き出す5つの箱。①誰に、②何を、③どう届けるか、④どんな関係か、⑤何で稼ぐか。お客様に近い方から順に埋めていきます。

① 誰に売っているか

「地域の皆様」と書きたくなる箱です。ただ、それでは絞れていません。

思い出していただきたいのは、直近1年で、実際に売上の大きな部分を占めたお客様です。何人か、顔が浮かぶくらい具体的に思い浮かべてください。

その方たちに、共通点はありますか。年代、事業の規模、住んでいる場所、困っていたこと。共通点が出てくれば、それが「誰に」の答えです。

共通点がまったくない場合もあります。それも大事な情報です。誰に向けた商売か決まっていない状態だと、③以降の箱も曖昧になります。

なお、買う理由が違う相手は、分けて書いてください。同じ商品でも、自分で使う方と、贈り物にする方では、まったく別のお客様です。

② 何を提供しているか

5つの中で、いちばん大事な箱です。そして、いちばん埋めにくい箱でもあります。

「品質の良い商品」「丁寧な施工」と書きたくなります。けれど、それはお客様が受け取っているものではなく、こちらが出しているものです。

書くのは、お客様のどんな困りごとが、これで解決したかです。

「工事の日程が読めなくて不安だった」が「いつ来て、いつ終わるかが分かる」に変わった。「何を頼めばいいか分からなかった」が「相談すれば整理してもらえる」に変わった。この形にすると、値段以外の理由が出てきます。

ここが「安い」だけで埋まってしまう場合、値下げ以外の打ち手を持てない状態です。第5回で、その状態から抜ける方法を扱います。

③ どうやって知ってもらい、届けているか

この箱は、2つに分けて書いてください。

知ってもらう入口は、紹介、ホームページ、地図検索、看板、チラシ、SNS、既存のお客様からの口コミなど。届ける経路は、店舗、訪問、配送、オンラインなどです。

5つの中で、いちばん空白になりやすい箱です。

書き出してみて「紹介だけ」になったなら、それは発見です。紹介は強い入口ですが、自分の意思では増やせません。紹介が止まったとき、打つ手がない状態になります。

入口が1つしかないことは、悪いことではありません。ただ、それを知らずにいるのは危険です。

「うちは紹介だけで回っている」と話されていた経営者から、あるとき紹介がぱたりと止まって焦った、という話を直接聞いたことがあります。そこから慌てて別の入口を用意しようとしても、形になるまでには時間がかかります。

④ どんな関係を保っているか

買っていただいたあと、そのお客様とどのくらい接点がありますか。

何もしていない場合は、正直に「何もしていない」と書いてください。これも空白と同じで、直せる場所です。

一度きりで終わる関係か、続く関係か。ここが分かれ目です。続く関係を持っているお客様がいる会社は、次の売上を作りやすいからです。新しいお客様を探すより、すでにご存じの方に次を提案する方が、手間もお金もかかりません。年賀状、点検の案内、季節の連絡。それだけでも接点です。

今はインスタグラムなどのSNSで、無料で近況の報告や商品の紹介等も行える時代になりました。 その場の売上だけなく、続く関係を持つを意識してみてください。

⑤ 何でお金をいただいているか

収入の入り口が1つか、複数かを書きます。

そして、それぞれが一回きりの売り切りか、続けていただく形かを分けてください。工事一件ごとの請負と、毎月の保守契約では、経営の安定感がまったく違います。

収入が一本足の場合、その一本が細ったときに立て直す時間が取れません。すぐに増やす必要はありませんが、一本足であることを知っているかどうかで、備え方は変わります。

埋めてみると、見えること

5つ埋め終わったら、全体を眺めてください。見るのは3か所です。

空白の箱。そこが、いま手を打つべき場所です。多くの場合、③と④が空きます。

②が「安い」だけになっていないか。そうなっていれば、価格以外の理由を作ることが次の課題です。

箱どうしがつながっているか。①で「高齢の個人のお客様」と書いたのに、③の入口が「SNS」だけ、というようなずれが出ることがあります。誰に向けているかと、どこで出会うかが合っていない状態です。

もうひとつ、おすすめの使い方があります。従業員やご家族に、別々に同じ5つを埋めてもらうことです。答えは、たいていずれます。そのずれが、次の一手のヒントになります。

この1枚に写らないもの

ここまでで、自社の現在地が1枚になりました。ただし、これは今日の写真です。

写真には、外で起きている変化が写りません。仕入れ値の上昇、法律や制度の変更、地域の人口の変化。どれも自社の努力では動かせませんが、この5つの箱すべてに影響します。

同じ業界の他社が何をしているかも、写りません。

次回は、この写真に写らない外の変化を見ます。自分では変えられないことを先に確かめておくと、せっかく立てた計画が半年で合わなくなる、という事態を減らせます。

まとめ

自社の商売は、誰に・何を・どう届け・どんな関係を保ち・何で稼ぐかの5つで書き出せます。

大事なのは、きれいに埋めることではありません。埋まらない箱を見つけることです。空白は、まだ手をつけていない場所であって、失敗ではありません。

次回は、この1枚に写らない外の変化を、4つの窓から見ていきます。

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