前回は、自社の商売を5つの箱に書き出しました。ただし、あれは今日の写真です。
写真は、時間が経つと合わなくなります。仕入れ値が上がる。制度が変わる。お客様の数そのものが減る。どれも、自社の努力では止められません。
今回は、その写真の外側を見ます。
なぜ、自分で変えられないことを見るのか
変えられないなら、見ても仕方がないと思われるかもしれません。
でも、逆です。変えられないからこそ、先に見ておくのです。
天気を変えることはできませんが、雨が降ると分かっていれば、傘を持って出られます。経営も同じで、変化そのものではなく、変化への備え方を選べます。
もうひとつ、大事なことがあります。同じ変化は、同業の他社にも同じように当たっています。制度が変われば、どの会社も対応を迫られます。だから、早く気づいて先に動いた側に、頑張りが効きます。
逆に、気づくのが遅れると、「気づいたときには手遅れ」になります。
外を見る4つの窓
見るべきことは無限にありますが、中小企業の判断に実際に効いてくるのは、この4つです。

① 制度の窓
法律、税制、補助金、業界の規制。近年でいえば、インボイス制度や電子帳簿保存法の対応は、規模に関係なく多くの会社に作業を生みました。
この窓のコツは、決まってから動くと、間に合わないことが多いという点です。決まりそうな段階で知っておくと、準備の時間が取れます。
商工会議所や商工会、自治体からの案内は、この窓の情報源です。読まずに置いている方が多いのですが、ここには補助金の情報も入っています。
特に補助金は、申請までに用意する資料(計画書、見積もりなど)が多くあります。
締切が近づいてから動き出したのでは、間に合わないこともあります。
案内を見つけたら、まずどのくらい準備期間が要りそうかだけ把握しておきましょう。それだけで気持ちに余裕が生まれ、制度を最大限に使う案を考える時間も取れます。
② お金の窓
物価、仕入れ値、金利、賃金、為替。
中小企業にとっていちばん直接効くのは、仕入れ値の上昇を、価格に乗せられているかです。
乗せられない状態が続くと、売上が同じでも手元に残るお金は減っていきます。しかも、ゆっくり進むため気づきにくい。気づいたときには、値上げの相談がしにくい関係になっている、ということも起きます。
前回の⑤「何でお金をいただいているか」と、ここはつながっています。
③ 人の窓
4つの中で、もっとも静かに、もっとも強く効いてくる窓です。
地域の人口が減るということは、お客様の数そのものが減るということです。どんなにいい商品を作っても、対象となる方が地域にいなければ売上にはなりません。
年齢層の変化もここです。今の主なお客様が60代だとして、10年後に同じ商売が成り立つか。その下の世代は、同じものを同じように買ってくれるか。
働き手を採用できるかどうかも、この窓です。仕事はあるのに人がいない、という状態は、売上の上限を決めてしまいます。
もうひとつ、買い方の変化もここに入ります。以前なら電話で問い合わせていたことを、今は先に調べてから連絡する。この変化は、商品を変えなくても起きます。
④ 技術の窓
技術の窓で大事なのは、自分が使うかどうかではなく、お客様の行動が変わるかどうかで見ることです。
新しい道具が出てきたこと自体は、直接の問題ではありません。問題になるのは、それによってお客様の探し方や選び方が変わるときです。
たとえば、来店する前に地図アプリで調べて決める方が増えれば、地図上の情報が古いことは、看板が倒れているのと同じ意味を持ちます。商品も価格も変えていないのに、選ばれなくなる。
技術を全部追いかける必要はありません。でも、お客様が使い始めたものだけは、知っておく価値があります。
地元の飲食店の店主から、直接こんな話を聞きました。それまでのお客様は常連の方と紹介がほとんどだったけれど、ホームページを用意してGoogleビジネスプロフィール(Googleマップ)に登録したところ、新規のお客様が2割ほど来るようになった、とのことでした。
一方で、まだそこまで手が回っていないお店も多いようです。すぐに効くものではありませんが、積み重なった差が、あとになって効いてきます。
商売には「時期」がある
外の変化とあわせて確かめておきたいことが、もうひとつあります。
商売には、人と同じように時期があります。業界にも、商品にも、会社そのものにもあります。
4つの時期

大事なのは、時期が変われば、正しい打ち手も変わるということです。
伸びる時期には、知ってもらうことにお金を使う価値があります。市場が広がっているので、動いた分だけ戻ってきやすい。
頭打ちの時期に同じことをしても、同じ成果は出ません。この時期に必要なのは、違いを作ることと、すでにいるお客様との関係を深めることです。
いま自社はどこにいるか
専門的な調査は不要です。手元の情報で、だいたいの見当はつきます。
- 売上の伸び率は、去年より上がっているか、落ちているか
- 値引きを求められる回数は、増えていないか
- 同業の会社は、増えているか、減っているか
- 新しいお客様と、以前からのお客様の割合は変わっていないか
売上の金額ではなく、伸び率で見るのがコツです。金額が増えていても、伸びが年々小さくなっているなら、頭打ちの時期に入りかけているサインです。
見つけたことを、追い風と向かい風に仕分ける
4つの窓と時期を見たら、最後にやることはひとつだけです。
出てきたことを、自社にとって追い風か、向かい風かの2つに分けます。
同じ変化でも、会社によって向きは違います。高齢化は、若い層向けの商売には向かい風ですが、介護や住まいの改修にとっては追い風になります。だから、一般論ではなく自社にとってどちらかで仕分けます。
この仕分けは、その場限りのものではありません。第6回で自社の強みを確かめるときに、そのまま材料として使います。
4つの窓でも見えないこと
ここまでで、自社を取り巻く大きな流れが見えてきました。
ただし、4つの窓は、いわば業界の外側の話です。同じ業界の中で、誰が利益を持っていっているのかは、これでは分かりません。
追い風の業界にいるのに、なぜか手元にお金が残らない。そういうことが起きます。
次回は、なぜ売れているのに利益が残らないのかを扱います。利益を削る5つの力を見ていくと、自社がどこで削られているのかがはっきりします。
まとめ
外の変化は、制度・お金・人・技術の4つの窓から見ます。あわせて、自社の商売がいまどの時期にいるかを確かめます。
これを先にやっておくと、せっかく立てた計画が半年で合わなくなる、という事態を減らせます。
変化は止められませんが、気づくのが早いことは、規模に関係なくできることです。むしろ、小さい会社の方が、気づいてから向きを変えるまでが速くなります。
次回は、業界の中で利益がどこへ消えていくのかを見ていきます。
YMWorksでは、外の変化の整理から、それに合わせたホームページやIT・AIの見直しまでご相談いただけます。

