前回は、外の変化を4つの窓から見ました。ただしあれは、業界の外側の話です。

追い風の業界にいるはずなのに、なぜか手元にお金が残らない。忙しさは変わらないのに、利益だけが薄くなっていく。

今回は、業界の中で何が起きているのかを見ます。

「忙しいのに、お金が残らない」の正体

売上が減っているなら、原因は分かりやすいです。困るのは、売上はあるのに利益だけが残らないときです。

このとき、多くの場合は「もっと効率を上げよう」「経費を削ろう」という話になります。それ自体は間違っていません。ただ、削られている場所を知らないままでは、削った分がまた削られるだけになります。

利益が残らないのは、企業の努力不足だけが理由ではありません。その業界の構造によって、残りやすさが大きく違います。

同じだけ働いても、利益が残る業界と、残らない業界があります。そして同じ業界の中でも、削られにくい位置と、削られやすい位置があります。

利益を削る5つの力

利益は、次の5つの方向から引っ張られます。

利益を削る5つの力。中心に①同業との競争があり、そこへ上から②新しく入ってくる会社、下から③代わりになるもの、右から④お客様の力、左から⑤仕入先の力が引っ張ります。
利益を削る5つの力。中心に①同業との競争があり、そこへ上から②新しく入ってくる会社、下から③代わりになるもの、右から④お客様の力、左から⑤仕入先の力が引っ張ります。

① 同業との競争

同じ地域で、同じようなものを扱っている会社が多いほど、この力は強くなります。

ただ、数だけが問題ではありません。もっと効くのは、違いがつきにくいかどうかです。

違いが伝わらなければ、お客様は価格でしか比べられません。すると、安くした会社から順に選ばれ、業界全体の利益が薄くなります。

前回の「時期」ともつながっています。市場が伸びているときは、全員の売上が増えるので争いは起きにくい。伸びが止まったとたん、奪い合いになります。

② 新しく入ってくる会社

いまの競合だけでなく、これから入ってくる相手も利益を削ります。

判断の基準はひとつ。この商売は、始めようと思えば始められるかです。

大きな設備、資格、長い年月で積み上げた信用。こうしたものが必要な商売は、新しい会社が入ってきにくい。逆に、道具とやる気だけで始められる商売は、常に新しい相手が入ってきます。

自社に当てはめるなら、「うちの仕事は、真似しようと思えば真似できるか」という問いになります。

③ 代わりになるもの

5つの中で、いちばん見落とされやすい力です。

同業ばかり見ていると、見えません。これは、同じ困りごとを、別の方法で解決するものを指します。

紙のカタログの代わりにウェブ。外食の代わりに、買って帰るお弁当。専門家に頼む代わりに自分で調べる。どれも、同業ではありません。でも、お客様のお金と時間を取っています。

同業との比較で勝っていても、「そもそも頼まなくていい」となれば、売上は消えます。

④ お客様の力

お客様は大切な存在ですが、利益を削る方向にも働きます

この力が強くなるのは、特定の相手への依存が高いときです。

一社で売上の大きな割合を占めていると、価格も、支払いの条件も、仕様の変更も、断りにくくなります。断れば仕事がなくなるからです。

これは相手が悪いのではなく、依存している側が弱くなるという構造の問題です。

⑤ 仕入先の力

反対側からも引っ張られます。

代わりの仕入先がない、あるいは切り替えに手間がかかるとき、この力は強くなります。値上げを告げられても、だいたいは受けることになります。

ここでの仕入先は、材料だけではありません。外注先、人材、使っている道具やシステムも仕入先です。

前回の「お金の窓」で見た仕入れ値の上昇は、この力が強いときに直撃となります。

5つ全部が強いわけではない

ここが、この回のいちばん大事なところです。

5つを並べられると、全部に手を打たなければいけないように見えます。そうではありません。

実際には、強い力はたいてい1つか2つです。そこを見つけて、そこに集中するだけで十分です。

見分けるのに、調査は要りません。次の問いに答えてみてください。

  • 値引きを求めてくるのは、
  • 値上げを言い出しにくいのは、
  • 最近、新しい同業を見かけることは増えたか
  • 「うちじゃなくてもいい」と感じた場面はあったか
  • 一番の取引先を失ったら、売上は何割減るか

答えにすぐに顔が浮かぶものがあれば、それがいま自社を削っている力です。

削られている力が分かると、打つ手が変わる

同じ「利益が残らない」でも、原因が違えば、打つ手は全く違います。

お客様の力が強いのにチラシを増やしても、利益は戻りません。仕入先の力が強いのに現場の効率を上げても、値上げ分は吸収しきれません。

削られている場所に合わない手を打つことが、一番もったいないやり方です。

ここまで来ると、次の問いになります。では、どう戦うのか。

実は、戦い方の選択肢はそれほど多くありません。次回は、安さで戦うか、違いで戦うか、絞って戦うかの3つを扱います。中小企業にとって、どれを選ぶのが現実的かもあわせて見ていきます。

まとめ

利益が残らないのは、努力不足だけが理由ではありません。同業・新規参入・代わりになるもの・お客様・仕入先のどこかで引っ張られています。

大事なのは、5つ全部に手を打つことではありません。いま自社を削っている1つか2つを見つけることです。

見つかれば、限られた人とお金を、効く場所に集められます。

次回は、その上でどう戦うかを見ていきます。

YMWorksでは、こうした現状の整理から、違いを伝えるためのホームページやIT・AIの活用までご相談いただけます。

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