前回までで、いまあるものの使い道が決まりました。
ただ、これでは足りないという場合があります。これ以上、お客様が増えない。地域の人口が減り、同業も多い。
シリーズ最終回は、次の売上をどこから作るかを扱います。
「これ以上、お客様が増えない」と感じたら
このとき、多くの会社がいきなり新しいことを始めようとします。
新しい商品。新しい地域。見たことのない分野。
気持ちは分かります。でも、新しいことほど、お金も時間もかかり、失敗しやすいのです。
実は、次の売上の作り方は4つしかありません。そして、どれが安全で、どれが危ういかは最初から分かっています。
次の売上、四つの方向
考え方は単純です。お客様がいまの方か新しい方か。商品がいまのものか新しいものか。

① いまのお客様に、もっと
すでにお付き合いのある方に、いまの商品をもっと買っていただく。
もっとも安全で、もっとも見落とされやすい方向です。
やることは地味です。使う頻度を上げていただく。まだ知られていない商品を伝える。連絡を切らさない。
第2回の④「どんな関係を保っているか」が空白だった会社は、ここにはっきりと伸びしろがあります。新しいお客様を探すより、手間もお金もかかりません。
② いまのお客様に、新しいものを
相手は変えず、扱うものを増やす。
この方向の強みは、お客様のことをすでに知っていることです。何に困っているか分かるので、外しにくい。
ゼロから作る必要もありません。「これもお願いできませんか」と聞かれて断っているものがあれば、それがヒントです。
③ 新しいお客様に、いまのものを
商品は変えず、届ける相手を広げる。隣の市町村。別の業種。違う年代。
商品を作る手間はかかりませんが、伝え直す手間がかかります。相手が変われば、響く言葉も変わるからです。
この方向がうまくいくのは、新しい相手の困りごとが、いまのお客様と似ているときです。
④ 新しいお客様に、新しいものを
相手も商品も新しい。いわゆる多角化です。
もっともリスクが高い方向です。相手のことも分からない、商品のことも分からない。学ぶことが2つ同時に増えます。
中小企業が最初に選ぶ方向ではありません。①から③を十分に試してからでも遅くないです。
順番がある
この4つには、はっきりとしたリスクの順番があります。
①がもっとも安全で、④へ行くほど危うくなります。知らないことが増えていくからです。
だから、上から順に試すのが原則です。
もっとももったいないのは、①をやり尽くさないまま④に飛ぶことです。いまのお客様に伝え切れていないことが残っているのに、見知らぬ分野へ出ていく。これをやってしまう会社は少なくありません。
自力でやるか、組むか
方向が決まったら、もうひとつ決めることがあります。
自力で進むのか、どこかと組んで進むのか。
自力でやると、進みは遅くなります。そのかわり、知識が自社に残ります。相手を探す必要も、相手に合わせる必要もありません。
組むと、速くなります。足りないものを相手が持っているからです。ただし、相手次第になります。
大企業なら会社を買うという手もありますが、中小企業に現実的なのは提携です。同業と組む。違う業種と組む。仕事を回し合う。
組むときにひとつだけ。先にやめ方を決めておくことです。うまくいったときの話し合いはできますが、うまくいかなかったときの話し合いは難しいからです。
それでも足りないとき:競争から降りる
ここまではすべて、同じ土俵で戦う話でした。
もうひとつだけ、別の考え方があります。土俵そのものを変えることです。
難しそうに聞こえますが、入口は4つの問いだけです。
- 業界で当たり前になっていることのうち、やめられるものはないか
- 業界の水準より、減らしてもいいものはないか
- 業界の水準より、ずっと増やすべきものはないか
- 業界の誰もやっていないことを、付け加えられないか
中小企業にとって特に効くのは、最初の2つです。
大きな会社と同じだけ揃えようとすると、どこかで無理が出ます。やめても困らないものをやめると、その分を本当に大事なところへ回せます。
もうひとつ、近年の入口として、使い切らない商売への切り替えがあります。作って、使って、捨てる。この流れを、直す・直せるように作る・使い続けられるように支える、に変える。仕入れ値が上がり続ける中では(第3回の「お金の窓」)、これ自体が違いになります。
ただし、注意があります。新しい場所には、先に沈んだ会社もいます。誰もいないのには、それなりの理由があることもあります。競争がないことと、需要があることは別の話です。
9回を通して
このシリーズで扱ってきたことを、一度に並べておきます。
| 回 | やること |
|---|---|
| 第1回 | 考える順番を決める |
| 第2回 | 自社の商売を5つの箱に書き出す |
| 第3回 | 外の変化を4つの窓から見る |
| 第4回 | 利益を削っている力を見つける |
| 第5回 | 戦い方を3つから1つ選ぶ |
| 第6回 | 強みと外の風を掛け合わせる |
| 第7回 | その強みを4つの問いで検算する |
| 第8回 | 力を入れる先を決める |
| 第9回 | 次の売上の方向を選ぶ(今回) |
並べると多く見えますが、一度に全部をやる必要はありません。
このシリーズで何度も同じことを書いてきました。選ぶこと。そして、やらないことを決めること。
大きな会社は、全部を同時にやれます。中小企業はやれません。そのかわり、決めてから動くまでが速い。これは、規模の大きい相手には真似できません。
まとめ
次の売上の方向は4つです。いまのお客様にもっと、いまのお客様に新しいものを、新しいお客様にいまのものを、新しいお客様に新しいものを。
上から順に試す。これが原則です。
それでも足りないときは、土俵そのものを変える道があります。入口は、やめても困らないものをやめることです。
9回にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。すべてを覚えていただく必要はありません。打ち手を決める前に、ひとつ手前を見る。それだけ覚えていただければ十分です。
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