VRIN テストは以下のような質問に答えることを目的としています。Q.その企業で最も重要なリソースや能力はなにか? そしてそれはライバル企業に対して有利な状況を作り出しているか、またその有利な状況を今後も保っていけるか? 企業がもつリソース(経営資源)やキャパシティは有形(Tangible)と無形(Intangible) 大きくふたつの区分に分類されます。 Tangible は手に触れられる、Intangible は手で触れられないという意味です。

よく有形資産・無形資産とか聞きますが、資産は会計学上の分類です。ここでは戦略を立てるために会計では測れない(金銭で数えられない)ものも含めて、リソース(経営資源)として考えます。たとえば、働いている従業員の熟練度などはお金に換算して会計項目に簡単には載せられませんよね? けれど、企業にとって大切なリソースでしょう。 下記は有形・無形リソースの中の細かい項目の、一般的な分類の例です。

有形リソース

物理リソース (physical resources)

土地・不動産、工場、工場設備、物流施設、店のロケーション、自然資源の所有権(鉱山などの採掘権)

財務リソース(Financial resources)

現金・現金預金・有価証券・信用貸付の格付け(銀行か現金を借りられるかかどうかの信用度)・借り入れの限度額

技術リソース(Technological Asset)

パテント、著作権、生産技術、イノベーション技術 無形リソース

人材と知的資本(Human assets and intellectual capital)

教育、経験、知識、熟練度、能力、従業員の知識や知恵、ノウハウ、リーダーシップスキル、キーワーカーの創造力

ブランド力・企業イメージや評判(Brands, company image, and repetitional assets)

ブランドの名前、トレードマーク、企業のイメージ、評判、サービス、責任能力、取引先との良好な関係とその評判

関係性 (Relationship)

他の企業とのパートナーシップ、他の組織からの技術提供、流通ネットワーク、パートナーからの信頼

企業文化と奨励制度(Company culture and incentive system)

企業文化、従業員のやる気、従業員の道徳やモラル、従業員の会社への信頼

VRIN テスト分析

VRIN テストでは上で述べたようなリソースを下記のような基準をもとに評価します。

  • そのリソース・能力に価値があるか?(Valuable)
  • そのリソースは希少でライバルが簡単に手に入れられるか?(Rare)
  • そのリソース・能力は簡単に真似やコピーできるものか?(Inimitable)
  • そのリソース・能力は他のものに取って代わられる恐れがあるか? (Non-substitutable)

普通企業は上で述べたようなリソースを複数持ち、それらが組み合わさって競合優位性(competitive advantage)を維持しています。どのリソースをどのリソースと組み合わせれば優位性を獲得できるのかというのは大変複雑で、ライバルがどのように優位性を維持しているのかを把握するのは大変困難です。また、その当の企業本人も気づいていないということも多々あります。

例えば、ある企業はブランド力やマーケティング力によって人気になっていたと思い、長年培った技術力のある従業員をないがしろにし、その結果、競合優位性を失ってしまったというような例も見られます。実はその長年培った技術力のある従業員はレアで簡単に真似できるものでは無いリソースであったわけです。

VRIN テスト分析では、先のような重要なリソースの見逃しを防ぎます。また後に戦略を立てるときに、どういったリソースを流用できるかなどを判断するのに役に立ちます。 下記は VRIN 分析を表にした簡単な例です。

もし、簡単に真似されるようなものや、代替えのきくようなリソースが企業のコアとなっているようであれば、ライバル企業や新規参入の企業に優位性を脅かされる可能性が高いといえるでしょう。