トレンド分析 TREND ANALYSIS

トレンド分析では売上高や利益を見てどのような傾向(トレンド)があるかを見ていきます。 また今後どのくらいの売上高や利益を見込めるか予測します。 トレンドを見ることにより、今行っている戦略がどのくらい成功しているか知ります。 一般的に以下のようなものトレンドを指標とします。(必要によっては財務以外のものも含まれます。)

  • 企業の売上高やその成長率
  • 企業の株価の動き
  • 企業の財務的な強さ
  • 顧客からの評判
  • 新規顧客の獲得
  • その他、企業内部のオペレーションに関わる数字
  • 製品不良の数

例えば、企業の売上高が年々増えているのであれば、売上高を増やすという戦略は成功していると言えるでしょう。 トレンド分析には様々な方法がありますが以下のようなものが一般的です。

  • 移動平均 (Moving Average)
  • 指数移動平均 (Exponential Smoothing)
  • 回帰分析による分析 (Liner Regression)

これらの計算は複雑なものもありますが、今は Excel などの表計算ソフトなどで簡単に行えるようになりました。

移動平均法 (Moving Average)

移動平均法過去複数のデータを加味した平均値を求めることにより全体としての傾向を知る方法です。 下記のような売上データがあるとします。

売上高
1450
2500
3450
4550
5400
6600
7700
8400
9550
10600
11700
12500

移動平均法では3つの過去の売上を平均したものを次の月の予測値とします。 第1、2、3の月の売上が 450,500,450 なので (450+500+450)/3 = 467 第4の月は 467 となります。(予測値) 第2,3,4の月の売上が 500,450,550 なので (500,450,550)/3 =500 第 5 の月は 500 となります。(予測値) こうして下の表のように、次々に平均値を移動 させていくのが移動平均方です。

売上高移動平均
(予測値)
1450 
2500 
3450 
4550467
5400500
6600467
7700517
8400567
9550567
10600550
11700517
12500617

グラフで表すと次のようなものになります。

移動平均法

月ごとに売上の上下はあるものの全体としては売上が伸びていることがわかります。

予測値の正確さを計る

では一体どれくらい予測値のラインが正確なのかを知るにはどのようにすればよいでしょうか? 予測値の正確さを知るには様々な方法がありますが、MAPE(Mean absolute percentage error)を紹介します。 Mean とは平均値、absolute は絶対値、percentage は百分率割合、error とは実際の数値と予測値の差をそれぞれ意味します。 下記の表を見てください。

売上高移動平均
(予測値)
予測値との差差の割合差の割合絶対値
1450
2500
3450
45504678315%15%
5400500-100-25%25%
660046713322%22%
770051718326%26%
8400567-167-42%42%
9550567-17-3%3%
10600550508%8%
1170051718326%26%
12500617-117-23%23%
191%

まず、売上高(実際の数値)から予測値を引き Error(予測値との差)をだします。 第 4 の月では 550-467=83 で 83 が違いとなります。 ただし、83 という数字単体では大きな違いなのか、小さな違いなのかわかりません。 ではこの 83 という数字は実際の数値に対してどのくらい違うのでしょうか? 83 を実際の数値で割ることによってどのくらいの割合を占めた違いなのかを知ることができます。 83/550*100%で 15%の違いが予測値との間にあることがわかります。 違いはマイナス値であることあるため絶対値で表します。 そして差の割合を合計します。ここでは 191%です。 この 191%を差を出し多分の月数で割ります。ここでは 9 ヶ月分 191%/9 で約 21%。予測値の誤差の平均が上下約 21%ということがわかりました。 つまり、この数字が小さければ小さいほど実際の数値に対して移動平均法の予測値が正確といえることになります。

回帰分析による分析(Linear regression)

回帰分析を行うことにより売上高の推移を y=bx+a の一次方程式で表すことができます。 y:売上高 x:月 b:傾き   a:切片 先と同じデータを使ってグラフを作ってみました。

回帰分析グラフ

Excel の図表作成ではこの式を自動で計算してくる機能があります。

Excel の関数を使う場合

まず傾きを求める時には SLOPE 関数を使います。 =SLOPE(月の範囲、売上高の範囲) 切片を求めるには INTERCEPT 関数を使います。 =INTERCEPT (月の範囲、売上高の範囲) 例のデータでは傾きは約 12・切片は約 454 です。 これにより y=12x+454 という式で売上高の予測を表すことができます。 また傾きが正の数ということは、売上高のトレンドは上向きということもわかりました。 この式を使い回帰分析の予測値を計算してみます。

売上高回帰分析
1450466
2500478
3450491
4550503
5400515
6600527
7700539
8400552
9550564
10600576
11700588
12500601

どちらが正確か?

移動平均法と回帰分析どちらが良いかというは単純ではありませんが先程と同じく MAPE を出して見ましょう。

売上高回帰分析予測値との差差の割合差の割合絶対値
1450466-16-4%4%
2500478224%4%
3450491-41-9%9%
4550503479%9%
5400515-115-29%29%
66005277312%12%
770053916123%23%
8400552-152-38%38%
9550564-14-3%3%
10600576244%4%
1170058811216%16%
12500601-101-20%20%
170%

170%/12 ヶ月で MAPE は約 14%となり、今回は移動平均法よりやや誤差の少ない予測値ということがわかりました。 トレンドを知り予測モデルを立てる方法は 必ずしもこの方法が一番というものがあるわけではありません。 他にも季節による変化を加味する方法や、最近の売上に重点を置いたものなど様々あります。 企業の製品の性質などにより使い分けるとより正確なトレンドを知ることができることもあります。